2010年09月09日

ライティングデザイナー、戸恒浩人さんがスカイツリーに込めた想い

2012年春の開業を目指して建築が続く「東京スカイツリー」。
週末ともなれば、建築現場の周辺は多くの人でごったがえし、完成前なのに、もう“東京の新名所”状態となっている。
かくいうタカハシも「建築中のスカイツリーって今しか見られない!」という妙なミーハー心にかられ、デジカメ片手に東京の下町「押上」に何度か足を運んでいる。

スカイツリー.JPG この距離だと写真に収めるのも一苦労


全長634mまでの道のり(現在は448m)を観察するのも飽きないが、開業時にはもっと楽しみなことがある。それは、“昭和のシンボル”東京タワーがそうであるように、陽が落ちれば毎夜美しくライトアップされるであろう“平成のシンボル”の光景だ。

東京に誕生する日本一高い建造物の夜景は、どんなコンセプトで我々を魅了するのか?
スカイツリーのライティングデザインを担当する、シリウスライティングオフィスの戸恒浩人さん(35)に話を伺った。

 *

「どこでもいいというデザインではなく、この場所にあるから素敵だと感じられるデザインを目指しました」


ライティングのコンセプトは「粋」「雅」
「粋」は隅田川の水の色をイメージした青いポイントカラーでタワーの柱を照らし、凛々しさと力強さを感じさせる。
「雅」は江戸紫をテーマに柱の外側を包む細かい鉄骨から、ピンク過ぎず青過ぎない微妙な加減の色で照らし、あでやかさと優雅さを表現している。

夜景-粋(new).jpg
【粋】 展望台の上には常に回り続ける照明が
画像提供:東武鉄道株式会社・東武タワースカイツリー株式会社


夜景-雅(new).jpg
【雅】 すべてLEDで照明は作られている
画像提供:東武鉄道株式会社・東武タワースカイツリー株式会社


この2パターンのライトアップは毎日交互に点灯し、東京の街を彩ることになる。
このアイデアには戸恒さんの”人と照明”を結ぶこだわりが込められている。


「たとえば今日が『粋』だとすると、翌日は『雅』になるわけです。見る人は自然ともう一つのライトアップを思い浮かべるのではと考えたんです。2種類あるということが、スカイツリーと人々をつなげるいい方法になると思いました」


たしかに毎日同じ明かりであればそれほど気にとめない光景も、2種類の照明があることで効果的にもう一方の照明のことが頭に浮かぶ。
スカイツリーをより身近な存在として感じられそうだ。

さらに戸恒さんは、スカイツリーの照明によって「東京の街が美しくなるきっかけになってくれたらうれしいですね」と語る。
というのも戸恒さんは、海外と比べて日本の照明にさみしさを覚えることが少なくないという。


「日本人の気質も関係あるのかもしれませんが、自分のところはよくするのに公共スペースに関しては無頓着なところってあると思うんです。例えば、道路照明にしても照度が取れていればいいでしょうという感じで、美しくはない。
ビルから蛍光灯の明かりが漏れていても『残業してるのかな』と思ってしまいますし、繁華街は飲み屋とかパチンコ屋とかお金を落とさせる“客引きの光”ばかりで、日本には人をうれしくさせる光が少ないと思うんです」



そう言われてみると、クリスマスなどの期間限定のライトアップなんかをのぞけば、散歩したいなぁと思わせる夜の街は少ないかも。


「照明によって癒されることってあると思うんです。エネルギーのことを考えれば明かりを消すに越したことはないですが、それと同時に生活や時間を豊かにすることも捨てていると思うんです。でも、そこらじゅうに照明をつければいいというわけではありません」

 *

戸恒さんは全長634mのスカイツリーのすべてを照らすわけではない。
そうした手法は現代のライトアップに合わないと考え、塔の下のほうを照らさないとか、真ん中の部分の外側は暗くして内側を光らせたりと、全体を100としたら50くらいの光量で美しくみせる工夫をこらしている。
“デザイン”という人間の手間をかければ、少ない電力でも素敵なものができることを証明しようというのだ。


「陰影礼賛という言葉がありますが、陰影を使うのは日本人が得意とするものだと僕は信じたいんです。明るさだけでなく暗さをうまく利用した照明をすれば街はもっと素敵になるし、日本が世界に誇る、日本人が作れる光の世界を表現できると思うんです。日本人として生まれてきた以上、そういうものを作り続けたいなと思っています」


テストをのぞいて、最初に東京スカイツリーのライトアップがお披露目されるのは開業日の夜のはず。


「僕がスイッチを押してみたいですよね。でもスイッチってなんか古いですね。照明を使って点灯するとか。今思いついたんですけど」


取材を終え、戸恒さんのオフィスが入るビルの窓からふと外に視線を向けると、建築中の「東京スカイツリー」と「東京タワー」の両方が見えた。



h.totsune.jpg
星を見るのが好きな少年だったという戸恒さん



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2010年08月06日

レーシングドライバー塚越広大選手に聞く、時速300km/hオーバーの世界

時速300km/hを超える世界で競い合うスポーツ――。

プロ野球の投手が投げる球も速くておよそ150 km/h、テニスプレイヤーが放つファーストサーブのスピードは200 km/hを超えるくらい。
自分の体が移動する、スキーやボブスレーの選手にしても、200 km/h以下のスピードを感じているに過ぎないのではないだろうか。

「他のスポーツとは比べようもない速度域。見えている景色も全然違います」

と語るのはレーシングドライバーの塚越広大選手(23)だ。
現在、フォーミュラ・ニッポンとスーパーGT(500クラス)という日本のモータースポーツのトップカテゴリーに参戦している。

スーパーGT02.jpg

塚越選手が乗るスーパーGTのマシンは、今年デビューしたホンダの「HSV-010 GT」



昨年、タカハシはレース関係者を通じて塚越さんと知り合う。
そして、3月のスーパーGT開幕戦が行なわれた鈴鹿サーキットで、塚越さんの戦う姿を目の当たりにし、その力強い走りにすっかりファンになってしまった。

その場で、ふと思った。
まさに新幹線級のスピードの中を競い合うレーシングドライバーとは、レース中はどういった状況に置かれているのか?
サーキット場で観戦しているだけではわからない、レースの裏側を塚越選手に聞いてみた。

まずタカハシが思ったのは、クルマを走らせる時は当然ひとりなわけで、レース中のドライバーってとっても孤独なんじゃないか? ということだ。


「サッカーや野球と比べれば個人競技的なところはあります。
でも、そんなに孤独感はないですよ。レース中には無線でチームとやりとりをしますしね」



それに戦っているのはドライバーひとりというわけではない。
モータースポーツとは、あくまでチームプレーで成り立っているのだと言う。


「クルマを仕上げるメカニックが何人もいて、そのクルマをセッティングするエンジニア、マネージャー、監督、そしてドライバーがいます。
さらに僕らを応援してくださるスポンサーの方々もいる。
走っているのはドライバーひとりですが、それを支えてくれる人たちは大勢いるんです」



タイヤ交換や給油などを行なうピット作業も、スタッフとメカニックの力の見せ所。チーム一丸となって取り組む。
世界最高峰のフォーミュラレース「F1」ともなれば、何百人というスタッフがクルマ作りに関わっている。それがモータースポーツの現実だ。

ドライバー自身への負担もハンパなものではない。
加速時、減速時、さらにはコーナーによっては数秒間ものあいだ、4G、5Gという強烈な加重がレース中のドライバーにのしかかる。例えば首には、頭部とヘルメットを足した重さの4倍や5倍の力がかかるわけだ。それを50周や60周続けるのだから、レースというのはまぎれもないスポーツであり、過酷な一面も存在する。


「フォーミュラ・ニッポンの場合、パワーステアリング装置がついてないので、最初に乗ったときはほんとうに重く感じました。壊れてるんじゃないの?って思うくらい(苦笑)。
ブレーキにしてもすごく硬いんです。レース中は100kg〜150kgくらいの力で踏み込んでいます。思いっきり蹴飛ばしているような感覚ですよ」



それらの動きをドライバーは、ハイスピードの中でサーキットの状況を瞬時に判断しながらクルマを操っている。例えば時速300 km/hで走行中にコンマ1秒でもブレーキの判断が遅れただけで、かなりの距離を進んでしまうということになる。
一瞬一瞬の判断が重要であり、少しのミスが勝敗を左右する世界……。
レーシングドライバーにも他のスポーツ同様、ケタはずれの集中力が求められるのだ。


「レース中は心拍数もかなり上がります。そのため常に正しい判断ができるようトレーニングが必要になってきます。有酸素系のトレーニングはすごく大事ですね。基本は走ること。長距離を走る場合もありますし、なわとびして、走って、最後ダッシュみたいなインターバルトレーニングを先日もやってきたばかりなんです」


ただし、レーシングカーのコックピットは一人のドライバーが運転するための必要最小限の空間しかないため、マラソン選手のように小さくて強い筋肉をつける必要がある。
短距離走の選手のような大きい筋肉をつけてしまうとエネルギーの消費も激しくなるうえ、体にかかるGもその分、大きなものになってしまうからだ。

今シーズン、塚越選手はフォーミュラ・ニッポンの第2戦で2位表彰台を獲得し、スーパーGTの第5戦では金石年弘選手とともに優勝という結果を残している。

GT優勝02.jpg

スーパーGTの第5戦「スポーツランド SUGO」で優勝し、喜びを爆発させる塚越選手(左)


フォーミュラ02.jpg

雨の中、フォーミュラ・ニッポン第2戦「ツインリンクもてぎ」で快走。2位表彰台をつかんだ。



そして塚越選手は今、いい結果を出すため“レースで強いドライバー”になることが一番大事だと感じているという。

クラッシュせず最後までしぶとく走る強さ、自分やクルマの調子が悪くても少しでもいい結果を残す強さ、何かトラブルがあっても挽回する強さ、置かれている状況をよりよくする強さ……。
「それがドライバーとして、チームを引っぱる力につながっていくと思うんです」

一見、物腰柔らかな好青年という印象の塚越さんだが、レースへのこだわりを語るときの表情はアスリートそのもの。
次のレースは今週末、フォーミュラ・ニッポン第4戦が栃木にある「ツインリンクもてぎ」で開催される。最後に意気込みを語ってくれた。

「前回、表彰台に乗ることができた『もてぎ』はボクの地元。ですから、なんとしても初優勝を飾りたいという気持ちがあります。GTでの優勝の勢いに乗ってがんばりたいと思います」

広大さん02.jpg

6歳からカートはじめ、レースにのめりこんでいった塚越選手。料理好きという意外な一面も。


塚越広大 オフィシャル ウェブサイト


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2010年07月08日

本場ドイツでも認められた、 嶋崎洋平さんのソーセージ

まだ梅雨も明けないのに、もう真夏みたいに寝苦しくジメっとした日々……。
そうなるとビールが美味いことこの上なく、酒量がいつの間にか倍になってしまったタカハシです。

今回紹介するのは、ビールにぴったりの定番おつまみ「ソーセージ」。

2008年にドイツで開催された国際食肉産業見本市「IFFA」の腸詰部門で、日本人としては初の世界ランキング3位を獲得したハム・ソーセージ職人の嶋崎洋平さん(33)に話を伺いました。


本場で認められたソーセージってどんな味なのか? 
あー、考えただけでもタマらん!!

というわけで、期待に胸を膨らませ、ビール片手に(!?)嶋崎さんが工場長を務める手作りハム&ソーセージのお店「厚木ハム」に向かった。

「厚木ハム」は嶋崎さんの父親が養豚業とは別に経営する加工肉専門店だ。
嶋崎さんがハムやソーセージを作りはじめたのは、さかのぼることおよそ10年前。
先代の職人が退職することになり、父親から「機械のオン、オフだけも覚えてこい」と言われたことがきっかけだった。

そして、わずか一週間で教えてもらったのは、機械の使い方や簡単なレシピのみ……。
不安だったのでは?

「突然、高波に襲われたみたいなものですよ。
不安はあったけど、考えてる暇もなかった(笑)」


それから2、3年は独学でハムやソーセージと格闘する毎日。
そんなとき、現在でも「師匠」と仰ぐ職人の斉藤重信さんに出会い、本格的に加工肉の知識を吸収していくことになる。幾度となく斉藤師匠のもとに通いつめ試行錯誤を繰り返し、ソーセージ作りにのめりこんでいった。

厚木ハム01.jpg

昨年から仕込み中の生ハムを見せてくれた嶋崎さん。
完成するまで約2年ほどかかるという。

05年、「力だめしだ」と思い、ソーセージの本場ドイツで開催される食肉加工品の国際コンテスト「SUFFA」に自身の加工品を出品。そこでいきなり金賞を6つ獲得。
まぐれじゃないことを証明しようと翌年にも同大会に出品、金賞を同数獲得した。
「ただし、05年と06年は師匠をはじめ周囲からの助言があった上での結果」と嶋崎さんは謙遜する。

そして07年、今度は「自分だけの力で」と臨んだのはドイツ・フランクフルトで行なわれた「IFFA」だ。審査方法は「SUFFA」と同じものの、3年に一度しか開催されないことから“加工肉のオリンピック”とも称される。
嶋崎さんは、そうした権威ある大会で前述の快挙を成し遂げたのだ。

「厚木ハム」の店内にはところ狭しと賞状やトロフィーが並ぶ。
しかし、嶋崎さんは「メダルを取ることが目的ではない」と言う。

「自分が愛情を注いで作ったソーセージが本場ではどう評価されるのか。純粋にそれを知りたかった」

厚木ハム02.jpg

店内にはハム、ソーセージ、精肉などがズラリ。
秋にいよいよ解禁される生ハムが奥にブラさがっている。

それでは、大会でも金賞を獲得したソーセージを待望の実食!
 
店内のショーケースにズラーっと並ぶソーセージの中から、まずはフランクフルトの名物ソーセージという「フランクフルター」をチョイス!
口先に近づけるだけで桜のチップの燻製香が鼻先に漂う。
パクつくと皮の「パリッ」、いや「バリッ」という音がして食べ応えがある。中はキメの細かい舌触りとともに豚肉の旨みがしっかりと味わえてサイコー。
脂っこさはなく、女性にもお勧めの一品。

次はサラミの一種でもある白いソーセージ「メットヴルスト」。
メットは香辛料を入れるの意、ヴルストはソーセージを指す。
ドイツ・ソーセージの基本的な作り方でこちらはもっとシンプルな味わい。
豚のバラ肉を使っていることもあってかなりジューシー。肉汁が口いっぱいに広がる?! 
香辛料はコショウのみというのが豚肉本来の味をしっかりと引き立て、ビールとの相性もバツグンだ。

厚木03.jpg

「フランクフルター」(左)と「メットヴルスト」(右)。
どちらもIFFAで金賞ゲットした商品だ! うめー

あっという間に嶋崎さんのソーセージに撃沈されたタカハシはここでふと考えた。
「嶋崎さんの強さとは何なのか?」と。

ソーセージが絶品だったのはもちろんだが、彼はまだ33歳という若さ、職人としての経験値はまだ浅いはず。
世界のツワモノたちを相手に高評価を勝ち取り、力を発揮できたのには何かワケが!? 
その理由を嶋崎さん自身はこう答える。

「父親が養豚業をやっていることもあって、豚小屋のなかで死産した子豚や成長していく子豚など、動物の生き死にを小さな頃から直に見てきました。
ボクは加工肉に関わりながらも肉をモノではなく、生き物としてみているんです。
ドイツ人の審査員が話していたらしいですが、見た目や味や香り、技術うんぬんは大事な要素だけれど、作っている職人さんの愛情が伝わってくればそれは加味されると。それ以外に理由が見当たらないんです」


生き物への感謝の心を忘れることなく、嶋崎さんの挑戦は続く。

「コンテストに関していえば、新商品である生ハムやサラミなどの質を高めて、ドイツでどういった評価をされるかが楽しみですね」

今年の秋、「厚木ハム」は場所を移転させる。
新店舗のオープンの際、昨年から仕込み中という生ハムがはじめて消費者に供される予定だ。今から楽しみで仕方がない。


厚木04.jpg
厚木ハム
〒243-0025 神奈川県厚木市上落合227-1
046-228-1186
10:00〜18:00/月曜定休(※祝日は月曜でなければ営業)
厚木ハム ホームページ


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