「おー、近くまでくるとやっぱ迫力あるな〜」と眺めていると、その横で白いジャージに身を包んだ男女4人がなにやらヘンテコなポーズをとっている……??
「な、なにをされているんですか〜?」(タカハシ)
「これは『けんちく体操』といって身体全体を使って建築物を表現する体操の一貫
です。たった今、東京スカイツリーの新バージョンが完成したところなんですよ」
と教えてくれたのは、「けんちく体操マン1号」の大西正紀さん。
3人バージョンの東京スカイツリーが完成!
右に立つのが、けんちく体操博士“イサーム・ヨネ”に扮する米山さん
右に立つのが、けんちく体操博士“イサーム・ヨネ”に扮する米山さん
一見、組体操のようにも見えるこの“体操”。はじめたきっかけは子供向けのワークショップだったと、考案した「江戸東京たてもの園」の研究員である米山勇さんが話してくれた。
「バウハウスのような子供を意識した建築の情操教育があってもいいんじゃな
いかと考えたんですね。子供を対象にする限り専門技術が必要になってはいけな
い。そうなると一番てっとり早いのは身体表現。コレいけるんじゃないかと思い
ました」
偶然、江戸東京博物館と江戸東京たてもの園で「東京建築展」というイベントをやる時期だったこともあってワークショップでお披露目をしたところ、子供にも大人にも好評だったんだとか。
「建築のことを知ろうとすると○○様式とか、○○イズムとか、知識を詰め込むこ
とが手段になってしまっている。でも、町でパッと建築物を見て、面白いなとか、
なんでできたのかなとか、身近なところに手がかりはたくさんあるはずなんです。
それを身体でバーンと表現してみると建築の特徴を身体で記憶することができるん
です。ワークショップに参加した子供たちも、後日思い出してあのけんちく体操の
ポーズをやりたいとか言ってくれるんですよ」(田中元子さん)

筆者も挑戦。なんとも中途半端な東京スカイツリーになってしまった……
田中さんは「けんちく体操ウーマン1号」として東京スカイツリーのアンテナ部分を担当している。
こうなるとちょっとオレもやりたくなってきた! というわけで腕をピーンと伸ばして東京スカイツリーに挑戦!!
……ちょっぴり恥ずかしいけどやってしまえば独特の開放感があるぞ! しかし、東京スカイツリーってこんなにピーンとした状態で建っているわけだ。
「そうなんです、わかってもらえましたか! 大人でもやってみると建築物の構造
を身にしみて感じることができますよ。でも、いい加減にやるとあんまり建物と似
ないんです(笑)。腕や指をピッと伸ばすとか、力をどこかに入れるだけにグッと
建築物の形に近づきます」(田中さん)

c Diganta_Talukdar
ホンモノと比べても遜色ない「タージマハル」。たしかに中腰は辛そうだ

c Kabacchi
「レインボーブリッジ」。つり橋部分(田中さん)を支える二人(高橋さん、大西さん)が
頑張っているが、表情からはみじんも感じられないプロ意識に脱帽
頑張っているが、表情からはみじんも感じられないプロ意識に脱帽
「たとえば僕らの作品にタージマハルがあるんですが、これは真ん中の高橋君が
非常にがんばっていて、てっぺんだけでなく大きなアーチを足で表現している。
一人でいくつも中腰で表現しなくてはならないので大変です。ドームの先っちょ
によって指先も微妙に変えることが大事です」
なるほど〜。簡単そうで意外と奥が深い「けんちく体操」。さらに、こんな楽しみ方もしてほしいと米山さんは付け加える。
「旅のお供っていう意識もあるんです。旅行先で建築物を訪れると背景にして記
念撮影をしますよね? でもね、皆さんどの建物の前でもおんなじポーズなんで
すよ。それは思い出に残りません! 建築物の形を身体で真似てみてください。
そうすれば何年たっても思い出が蘇ります」
今までよりも建築物をグッと身近に感じられるかも!? 恥ずかしがらずポーズ!!
★けんちく体操ホームページ

国内外の建築物を体操したムックが発売中!
『けんちく体操』エクスナレッジ 1,260円
体操と文/チームけんちく体操(米山勇+高橋英久+田中元子+大西正紀)
●写真/村上庄吾(東京スカイツリー) 山本尚明