2011年01月26日

最近、全力で走らなくなってきたという方へ・・・株式会社アプレッソ代表 小野和俊さんの夢中力

一年ほど前に、作物や動物を育成するゲーム「サンシャイン牧場」が話題になった。SNSであるmixi上で動作し、マイミク同士で畑に水をやったり、虫を入れていたずらしたりする行為が生産量のアップにつながる、ソーシャル・アプリケーションだ。「サン牧」から火がついたソーシャル・アプリ人気は現在もつづき、新作品がぞくぞくと登場している。ゲームは普段やらないが友人に誘われて始めてみた、という人も多いのではないだろうか。

実はわたくし、ふく子も一年ほど断続的に続けているアプリがある。それは株式会社AQインタラクティブが運営する「ブラウザ三国志」。名前の通り「三国志」の世界観の中で、プレイヤーは一城の主となり、他プレイヤーと同盟を組んで領土を拡大したり、城を攻略したりする戦略ゲームだ。mixiアプリとして飛び抜けた人気と課金率を誇り、プレイヤーとして、ニコニコ動画を運営する株式会社ドワンゴの社員のすさまじいのめり込みっぷりでもネット上で話題となった。代表取締役会長の川上量生氏を筆頭に社内で同盟メンバーをつのり、「つぎ込んだお金は数百万」を始め、「会議中にもプレイして周囲はドン引き」「ゲーム終了時に敵同盟も招待して大規模なオフ会を開催」など数々の話題を提供、そして伝説も残した。

いい大人、しかも会社の代表がゲームにそんなに夢中になるなんて・・・という声もあるかもしれない。しかし、「ブラウザ三国志」を1年プレイした感覚でいうと、30才overの社会人の割合がかなり多い。そして、同盟盟主をやってゲームに深くコミットしている人は、会社経営者や店舗のオーナーといったリアルでも一国一城の主であることが珍しくないのだ。

法人向けソフトウェアを開発して売っている株式会社アプレッソの代表取締役と、ブラウザ三国志の盟主活動を兼任している小野和俊さん(34)もその中のひとりだ。ブラ三のプレイ日記を探していたときにたまたま小野さんのブログを発見したのだが、略歴によると、慶應SFCを卒業、24歳の時に株式会社アプレッソの代表取締役となったという。小野さんのブログのエントリである、戦争の興奮でナチュラルハイになったり、同盟員の落城に涙したりする日々を書きつづった「ブラウザ三国志17鯖 − プログラマー同盟の軌跡」は、笑いあり、涙ありの一大叙情詩だった。これ以上できないというくらい真剣にプレイしていたからこそ生まれる感動がそこにはあった。

「へ〜、コンピュータ関係の会社を経営してて、ゲームに入れあげてるって、典型的なオタ社長?」と斜に構えないでほしい。小野さんは、高校生の時に東京都の年間ランキングで1位になったこともあるくらい足も速いし、慶應では弁論部の部長をやっていて、しかもかなりカッコいいんだぞ。参ったか!(威張ってどうするふく子)。 IT業界のことやベンチャー企業での日々を主に書いている前述のブログも、その方面では絶大な人気と知名度があるし、「なんでもできる人」という印象だ。

しかし、廃人と呼んでいいくらいゲームをやっているのに、「悩みとかありますか?」と聞きたいくらいリアルも充実しているとは。一体どうやって・・・? その謎を探るため、小野さんにお話しを伺いに行った。


小野さん1.jpg
「あ、敵襲!」となんだか嬉しそうな小野和俊さん。画面はブラウザ三国志。


江戸川橋から徒歩すぐのところにある株式会社アプレッソの一室に、IT業界っぽいカジュアルな服装にノートパソコンを携えて小野さんはあらわれた。とても理路整然と、しかも感じ良く話す人だ。やっぱり何でもサクサクと要領良くこなしてしまうのかな・・・という第一印象だったが、話を聞くうちにちょっとずつ違うものへと変わっていくこととなったのである。

 「起業して新しいことをやる時は、前例もなく、役に立つかどうかわからないことに
 取り組むことになります。だから、ゲームのような無駄かもしれないものにものすご
 く没頭出来る人は、一般と比べて起業に向いているのではないでしょうか」


ゲームの世界とリアルとの繋がりについて尋ねると、こんな答えが返ってきた。

「ネトゲ廃人と呼ばれるほど、ゲームに没頭できる人は、実は新しいものをつくるひとつの資質を持っているのかも」、という小野さんもとことん熱中するタイプだった。

中学・高校と陸上競技をやっていた小野さんは、これ以上できないほど練習をしていた。まず朝は、自転車通学だった学校(ということは2キロ以上?)へ走っていく。それも通学鞄に6キロのダンベルを2つ入れて!そして、汗だくで席に着き、授業中は走行姿勢のイメージトレーニングをしつつ、睡眠も取って体力を回復。放課後はもちろん部活をして家に帰って寝る。そして朝起きて・・・という生活を2〜3年は送っていたという。
「片手に12キロの重りをつけて走っても、体が傾くのでタイムの向上に効果はなかったとは思いますが」と小野さんは苦笑していた。要領よく、ではなく凄まじい練習量によって、高校1年の時には東京都の年間ランキング入りするまでになったわけである。

しかし、元々はそんなに走るのも速くなかったという小野さんに成功体験を与えたであろう陸上競技は、挫折感も同時に与えたそうだ。

「脳みそも筋肉になるくらい練習しても、所詮は東京都の同学年の中での1位」。筋肉の付き方のような資質の面での限界を感じた小野さんは、大学では弁論部という場を選んだ。慶應大学の弁論部は、毎年100人ほどの新入部員が入るが、卒業時まで残るのはだいたい3名だという。新入部員の主張に「国会の答弁が100倍ひどくなった感じ」の野次や罵声が飛びまくり、たいていの人間は耐えられなくなるそうだ。なかには、体調を崩す部員も出るというから凄まじい。そこで部長を勤め上げたのだから、負けず嫌いでもあるし、これと決めたらとことんやるまで気がすまないのだろう。

卒業後はプログラミング言語のJAVAに関われることと、日本より5年進んでいるというシリコン・バレーに行けるという理由でサン・マイクロシステムズに入社した。1年半の会社員生活を経て、縁とタイミングもあり、株式会社アプレッソの代表取締役となった。日本では顧客に合わせてシステムをつくる業態が多いが、アプレッソは自社のソフトウェアを売っており、同種の製品を扱う会社の中では1位に近いところにいるという。「エンジニアにとって良い環境をつくる」ことと、「丁寧にものをつくる」を意識しているそうで、職人気質がうかがえる。

しかし、社会に出て2年弱の若者がいきなり社長になれるのかと思うが、それには理由があった。

 「社会人2年目といっても、プログラミングを始めて2年という訳ではありませんで
 した。小学生の時に、お金をかけずにゲームをやりたいという動機でプログラミング
 を始め、大学生の時にはインターネットが普及したこともあって、他のことに夢中に
 なっている間も、ゲームとプログラミングはずっとやっていましたから」


当初は小野さんを生まれたときから高スペックの人間だったのだろうと思っていたが、実は、後からどんどんいろんな機能を増やしていったということがわかった。好きになると、凄まじい集中力でやれることはとことんやり、どうにもならない限界が見えると違うモノに挑戦する。その繰り返しが、一見オールマイティーに見える現在の小野さんにつながったのだ。その中でも、もはやライフワークとなっているゲームとプログラミングは小野さんの中で一体になっているともいえる。

 「ゲームとの関わり方にしても、全力でやって、生産者になるところまで踏み込めた
 ら面白いと思います。ブラウザ三国志の中でも、プログラマー同盟をつくり、ゲーム
 に便利な拡張ツールをプログラミングしたりしていました。また、ブラウザ三国志で
 の同盟運営は、同盟員を書簡でリクルートしたり、モチベーションの維持に努めたり、
 有利な条件で停戦できるように外交したり、チャット会議を開いたり・・・とリアル
 の社会生活と似ていて、しかもなかなか体験しがたいようなことにまで対処しなけれ
 ばいけません。実際、ゲーム内で送る書簡はビジネスメールさながらです。ブラウザ
 三国志を始めて、会社をやっていて本当に良かったと思いました(笑)」


話の中で、スティーブ・ジョブズがカリグラフィー(装飾文字)の教育を受けていたことが、フォントのこだわりにつながり、後のアップルの躍進につながったという有名なエピソードもでてきた。

 「社会的にプラスになることにだけ全力で取り組む人と、役立つかどうかわからない
 けど、好きなこと・楽しいことに、それで人生を棒に振るかもしれないくらい、没頭
 できる人とはぜんぜん違うと思うんです」



小野さん2.jpg
「会社設立後、最初の2年間は1日も休まずに仕事をしていました」


小野さんにスーパーエンジニアの名をもたらしているものは、夢中力!
好きなことのみに発揮される凄まじい集中力だと思った。子供の頃は誰しも持っていたその力。「役に立つことにしか全力で取り組めなくなった人にはいいリハビリになると思います」というゲームで鍛えてみてはいかがだろうか。隙間時間でも十分できるブラウザ三国志がオススメだ。

私、ふく子も今回のインタビューで、陸上やゲームなどのやりこみエピソードを伺っているうちに「とにかくやってみよう!」という爽やかな気分になった。あまり何の役に立つのか考えすぎるとつまらなくなるし、何が役に立つかは後になってみないと分からないもの。

今年の抱負は「夢中力を育てる」でいきます!


★小野和俊のブログ


posted by 若手 at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | ふく子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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