2010年09月17日

ハンドメイドにこだわる、「ノックの帽子屋」店主・横山智和さん

今年の極暑のあまりの厳しさに、涼しそうな素材のハットが欲しくなった8月の末。
ネットを徘徊して帽子を探していたところ、「ノックの帽子屋」さんの、ちょっと洒落た雰囲気のHPを発見した。

すべて手作りだという帽子は、形そのものはベーシックだが全体的に丸みを帯びていて、絵本にでてきそうな可愛さ。麦わらのような素材でつくられたベレー帽など、ありそうでなかなかないラインナップにもグッとくるものがあった。
注目すべきは、オーダーメイドで、完全に自分好みの帽子がつくれるところだ。

つくっているのは横山智和さん。
今年の8月に店舗を構えたばかりだが、大塚愛や東京事変といったミュージシャンにも衣装を提供している。

いったい横山さんてどんな人なんだろう……。
帽子の実物を見たかったこともあり、帽子屋さんに行ってみることにした。

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大塚愛さんの衣装としてつくった「帽子がくっついた帽子」


「ノックの帽子屋」は、京成曳舟駅から徒歩5分、下町ファンに人気のキラキラ橘商店街の入り口近くにあった。いかにも昭和30年代といった風情の、1階が半分土間になっている築75年という住居兼店舗。だが、店内は味わいのある小物や家具で飾られている。
素敵な帽子もいっぱいだ。

横山さんは、金混じりの土壁が見える半畳ほどの小上がりから「あ、どうも」と様子を窺うように出てきたのだが、少しばかり私の想像と異なっていた。
坊主頭に丸眼鏡、もじゃ髭でゲーム作品の『サクラ大戦』のTシャツを着た男性。
どう見ても、ファッションとは無縁そうなのだ。

 「しゅっとしてカッコイイ! っていうものよりもぼんやりしている帽子が好きです。
 帽子らしい形の帽子が好きですね。メッセージ性の強いモノはあんまり好きじゃない
 です。
 ぼくのデザインはこうじゃなきゃっていうのはなくて、誰かのかぶりたい帽子を具現化
 して、それぞれに自分の好きな帽子をかぶってもらうのが一番」


とつとつと帽子について話す姿は、こだわりの職人という雰囲気。流行を気にして帽子をつくることはないという。横山さんが現在愛用中の黒いハットは、飲み屋で酔っぱらいの尻に敷かれて破れたりしたところを繕いつつ、もう6年かぶっているとか。
実物を見せてもらうと、帽子の色落ちや繕った跡がいい味を出している。

横山さんのつくるシンプルで温かい帽子は、その人柄がにじみ出ているようだった。
それは曳舟という土地を選んだことにも表れている。

 「気取ってない場所がいいなぁと思って」

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横山さんには背伸びがまったくなく、下町の商店にも馴染んでいるので年上だと思いこんでいたが、まだ26歳だという。これには驚いてしまったが、彼も自分の年齢に驚いているようだった。

 「まだ26かぁって思いますね。若いなぁって。もうちょっと年取ってると思いました。
 まだ1ヵ月、まだ2年かぁって、時間の流れが遅く感じます」


一般的日本人とは真逆の発言をする横山さん。
時間の流れが遅く感じるその感性を養ったのは、きっと家族だったのだろう。

横山さんは、溶接技師の父親の赴任先だったオランダで幼少期を過ごした。だが、7歳の時に父親は突然亡くなり、家族は日本に帰ることとなる。
母親は幼い横山さんを含めた3人兄弟を女手ひとつで育てた。
母子共々、大変だったのではと思うが、美術学校と文化服装学院に3年ずつ通い、卒業して2年で店舗を構えた横山さんはとても自由に見える。

以前、母親にこう言われたことがあると彼は言う。
「親の言うとおりにするような子供には育てた覚えはない」

3人の子供をひとりで育てている時に、同じ事を言える人はどのくらいいるだろうか。
なかなか言える言葉ではないと思う。
懐の大きな、枠に縛られない母の影響を横山さんは受けているのだろう。

 「勇気づけられますけどね。何でも好きなことしていいんだって」

技術者だった父や機械いじりの得意だった祖父の影響か、手を動かすのは小さい頃から好きだったそうだが、なぜ帽子づくりを選んだのかを尋ねると、

 「立体的なモノをつくるほうが好きだったのと、消去法です。
 どうしても帽子、っていうわけでもないです」


というアッサリした答えが返ってきた。
それでも、ただ帽子をつくっているだけではない。

「好きな旅をして、ついでに素材を集めて、帽子つくって売って、また旅に出て」という生活だが、最近1ヵ月間旅したというエクアドルはパナマ帽の産地という理由で行ったそうだ。趣味と仕事の境界線はあまりなく、帽子のことがいつも頭にある。

また、フォトグラファーの相澤心也さんと組んで、横山さんの帽子を使った作品を製作したりもしている。
『笠地蔵』のお話しをモチーフにした作品や、羊を一頭煮込んで取り出した骨を使った作品などアイディアにあふれたもの。

10月の末には30組余りの新進クリエイター達と廃墟を借り切り、東京デザイナーズウィークに合わせて「CO-OP」という作品展示会をやる。

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地蔵たちからお礼が届くことはなかったという


最後に、帽子屋も軌道に乗ってきた横山さんに将来の夢を尋ねたが、
「夢……。風呂付きに部屋に住むのが夢だったんですけど、これは叶ってしまったので、また見つけないと」と欲がない。

達観している仙人のようだが、逆にそれこそ今時の若者らしい感覚かもしれない。むやみに熱くなることはないが、帽子の話になると、ちょっぴり背筋が伸び、喋り方もちょっぴり力強くなる青年。

そんな素敵な?横山さんに私は、10年はかぶれるベーシックなハットをつくってもらいたいと思った。そして、破れたら曳舟に直してもらいに行って「まだ○ ○才だよ〜、人生って長いよね」なんて会話を交わせたらいいなぁと思った。


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外出着に着替えていただきました。かぶっているのは愛用の黒(かった)ハット


★「ノックの帽子屋」HP

★クリエイター主導の新しい展示会 「CO-OP」 

posted by 若手 at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | ふく子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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