2010年06月04日

「平成の浮世絵師」6代目歌川国政さん

「浮世絵」と聞いて皆さんはどんな絵を思い浮かべますか?

僕の場合は教科書に載っていた菱川師宣の「見返り美人」だったり、葛飾北斎の「富嶽三十六景」や東洲斎写楽の役者絵です。

それに日本史に疎い自分にとっては、「江戸時代の風俗を描いた庶民のための絵」といった程度の乏しい知識しかありません。なおかつ、お目にかかれるとすれば美術館や百貨店の催し物あたり。何百年も前の“昔の絵”というぐらいの認識だったわけです。

ところが江戸時代に生まれた浮世絵の伝統を受け継ぎ、今も積極的に活動を続けている浮世絵師がいます。それが今回ご登場いただく6代目歌川国政さんです。


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「当星十二花月 情熱の薔薇」
と花をモチーフにした美人絵シリーズですが、近くで見ると非常に繊細な
線で描かれていることがわかります。背景には5月の星座「おうし座」。


彼がこの世界に興味をもったのは、高校生の時に歌川国芳の「相馬の古内裏」に衝撃を受けたのがきっかけ。その後、テレビでたまたま知った歌川派の家元にアポなしで訪問、自分の絵を見てもらい弟子入り。

しかし、当時すでにご高齢だった先代が入門後半年で亡くなって、現在までのおよそ10年間、ほぼ独学で(!)浮世絵を描き続けてきたということです。


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「國眞妖異伝之内傑士虎仁王逢魔ヶ時」
国政さんが飼っている糖尿病の猫をモデルした作品。糖尿病の症状
「ケトアシドーシス」を妖怪に見立て、病魔と闘ってほしいという気持ちを込めたとか。



そんな国政さんに現代における浮世絵の楽しみ方と、ご自身の創作についてお話を伺いました。


――まず、初歩的な質問ですみません。そもそも浮世絵ってどういうものなんでしょうか?

浮世絵の『浮世』とは現代風とか当世風という意味があります。“直訳”すれば浮世絵はモダンアート。江戸の町民にとっては、現在のファッション誌、ブロマイド、新聞やテレビなどで、そういったいろんな情報源が浮世絵に集約されていたんですね。
マンガも近いのかもしれません。



――マ、マンガですか?

出版社があって、漫画家がいて、量産してっていうシステムと似ています。
浮世絵の場合も版元という出版社みたいなものがあって、そこに所属する絵師が絵を描いて、絵師の注文に基づいて彫師が木版に彫って、摺師が指定された色を刷っていくという手順でした。
一枚の値段はかけそば一杯分程度だったらしいです。ですから価格にしても、ごく身近なものだったと思うんです。



――なるほど〜。

でも現代は雑誌やテレビやネットなど、情報が分散して枝分かれしてますよね。
ですからそのまま置き換えてやっても、やる意味がないと僕は思っているんです。
では何が残っているかというと浮世絵が持っている独自の様式美なんです。
それをわかりやすく伝えるということが現代の浮世絵師としての僕の務めだと思うんです。
復古的なことをやるのではなく、とにかくどんな形でもわかりやすく浮世絵を楽しんでもらえるのがいいのではと思ってるんです。


RIMG0325.JPG

6代目はまだ32歳。
これからさらなる成長があるに違いない。



――普段はどんな格好で描いているんですか?


浮世絵師というと、絵を描くときはタオルを巻いて作務衣を着て……というイメージがあるみたいなんですけど全然そんなことありません(笑)。
僕は洋服も大好きですし、絵を描くときは必ず音楽をかけるんです。



――どんなジャンルの音楽?


ロック、ジャズ、ボサノバとか洋楽をメインにかけながら描いてますね。
どうしても純和風なイメージがあるんですが、あまりそういうことにとらわれないほうが浮世絵らしいと僕は思ってるんです。
コーヒーカップとか靴を描いてもいいし、対象物は和だろうが洋だろうがなんでもいいと思っていて、大事なのはそこに絵師としての心意気、精神的なものが筆線に現れていればいいと思っているんです。



――国政さんの浮世絵のこだわりを教えてください。

繊細さには気を配っていますね。
近くで見て『細かい』と思わせて、なおかつ遠くから見ても構図的に優れている、という作品づくりを常に心がけています。
そういう楽しませ方ができるのは浮世絵ならでは。良い悪いは別として、例えば西洋絵画の多くは、近くで見ると何を描いているのかわからないけれど、距離をおいて見ると絵の良さがよくわかるという手法がとられると思うんです。
けれど浮世絵の場合は近くで見てもわかるし楽しめる。そういった緻密さとダイナミズムさを兼ね備えた作品づくりを目指していますし心がけています。



――今後はそういった視点で見てみます! ですが「浮世絵」というとどうしても構えてしまうのですが……。

極力、肩肘張らない状態で見て欲しいなと思いますね。
今までは主にギャラリーで個展をひらいていたんですが、前回はカフェでやらせていただきました。楽な気持ちで見てもらえるんじゃないかなと思ったんですね。
浮世絵って本来はそういう風に気軽に見てもらうものだと思うんです。
単純に『コレやばいね』とか『この感じいいよね』みたいなことで充分な気がするんです。



――とても親しみやすくなりました〜!

僕の絵を見ることで、昔の浮世絵のことに興味を持つきっかけになってくれたらうれしいですね。


これからも年に2回ぐらいのペースで個展を開いていく予定だという国政さん。
平成の絵師が描く現代の感覚と伝統が入り混じった浮世絵の世界に、一度触れてみてはいかがだろうか。


歌川国政ホームページ





posted by 若手 at 00:00 | Comment(1) | TrackBack(0) | タカハシ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ほぼ独学とはすごいですね!
歌川さんの個展があったら行ってみたいです。
Posted by ヨアキム at 2010年06月16日 02:42
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