2011年02月11日

日本初(?)のスパイス専門誌『Spice Journal』編集長カワムラケンジさん 「スパイスは世界中の料理の最大公約数なんです!」

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大阪のカワムラケンジさんから、『Spice Journal』の最新号と「チキンカレーキット」が届いた。雑誌は後で読むことにして、早速カレーキットを試してみたくなった。小さな透明のビニールの袋に、小分けされた何種類かのスパイスとレシピが行儀よく収まっている。封を開けた途端、スパイスの香りが部屋中に膨らんで幸せな気持ちになった。

カレーパウダーミックス、ガラムマサラ、クローブ、グリーンカルダモン、ローリエ…スパイスの内容がレシピに記されているのだが、料理をほとんどやらない僕にはどれがどれだかだかさっぱりわからない。『Spice Journal』03号に目を移すと、幸いこの号ではスパイスの詳細な解説が特集されていた。なるほど、この小さな木の枝の欠片みたいなのはカシアシナモンというのか……。よくカプチーノについているセイロンシナモンよりも、カシアシナモンは煮るほどに甘味と辛味と苦味が混ざりあい複雑な味が出るのだという。

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『Spice Journal』03号誌面


食材を揃えて、馴染みのないスパイスたちに悪戦苦闘しながら約1時間半、レシピ通りに作ってみると、おおっ! 本格インド料理屋でいただくカレーの味みたいじゃないか! 美味しかったですよ、カワムラさん!

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今回のブログの主役は、このミニコミ誌『Spice Journal』の編集長・カワムラケンジさん。キャッチコピーは「スパイスが紡ぐ味と人」で、レシピ、インド旅行記、スパイスの科学的分析などで構成される「日本初?」のスパイス専門誌だ。

昭和40年に大阪の藤井寺市で生まれたカワムラさんは、高校を卒業後バイクレーサーを目指していたが怪我で挫折、レースで嵩んだ借金を返すため小さな喫茶店で働き始めたことが、料理の道へ進むきっかけだった。

 「ワインやスペイン料理を出している小洒落た喫茶店で、エレガントなお嬢さんばか
 り勤めているんですよ。僕はブルーワーカーな雰囲気なので居心地悪かったんですけ
 ど、厨房で料理を作っていると彼女たちが『料理できる男ってカッコいい』と言うわ
 けですよ。『何がカッコええねん! ふざけたこと言うなよ』と照れ隠ししながら、
 料理できると女の子にモテるんやと、そこが始まりですね」


喫茶店の支配人がいい人で、料理学校に通わせてくれた。同時に、中華料理店で給料なし、住み込みの丁稚奉公も始めた。朝10時から喫茶店で働き、夕方から料理学校で学び、深夜3時まで中華料理店で働くという生活。

 「中華は絵に書いたような裏道の大衆食堂で、お客さんは長距離トラックの運転手や
 そのスジの人たちなど荒くれ者ばかり。寝る間もなく働きましたけど、20代は元気な
 んで。綺麗なお姉ちゃんにモテたい、うまい料理作ったらやらしてもらえるんや! 
 という勢いで、もう犬のようにまっすぐ行きましたね」


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男子のモチベーションはやがて、プロ意識に変わっていく。様々な料理を多角的に勉強していくなかで、特に興味をもったのが「カレー」だった。

 「カレーほどポピュラーなのに得体の知れないものはない、そう思ったんです」


しかし、カレーを研究しようとしても、当時は本格的なカレーの専門書は少なく、いろんな店を訪ねても、カレーの材料といえば「カレー粉」や「ルー」と言われるばかり。しかし、大阪でもっとも古いインド料理屋「アショカ」を訪れたときに、「ターメリック」や「コリアンダー」などカレーを構成するスパイスの名前を初めて聞いた。やがてエスニック雑貨店などでスパイスは容易に入手できるようになり、カレーの謎を解明する旅が始まり悪戦苦闘しながら腕を磨いていった。

 「それでも、カレー=旨みやコクといった固定観念があったんですが、それを壊して
 くれたのは、この頃から始めたライター仕事を通して出会ったインド人たちです。同
 じインド人といっても、宗教やカーストの違いによって料理もさまざま。この小さな
 島国で、カオスのように混在している彼らとの出会いが、カレーに対する固定観念を
 壊してくれたんです」


そのカオスの根底にあるのはスパイスだと気づいた。スパイスは日本、中華、西洋、あらゆる料理に用いられ、そして自由だ。「こう調理しないといけない」という規則はない。

 「同じインド人でも、ひとりひとりスパイスの使い方、料理への考え方が違います。
 そこから見えてくる人間模様が刺激的で面白くて。スパイスは料理と人間をつなぐも
 ので、世界中の料理の最大公約数なんだと思って、『スパイスが紡ぐ味と人』という
 メッセージを発信しているんです」

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神保町の「マンダラ」のカレーに舌鼓を打つカワムラさん


いま、スパイス研究家として様々なカレーショップに「カワムラブレンド」のスパイスを提供するほどになったカワムラさんだが、彼の探究心のバックボーンにあるものは、幼少期、大阪の町で培った「突撃、隣の晩ご飯」体験である。

カワムラさんの母親は料理にこだわりのある人で、マナーにも厳しかった。食事中は食卓しか見てはダメで、テレビを見ながらなどもってのほか。食卓には、ご飯、天ぷら、野菜の煮付け、お吸い物などがいつも綺麗に整理されて並んでいた。

 「うちにはソースとかマヨネーズがなかったんです。母親が、そんなものつけるのは
 おかしいと。でも、友だちの家で夕飯をご馳走になると、バリバリに潰れたような
 キャベツに、マヨネーズがベトベトにかかっている。うちのキャベツは、針金のよ
 うに細く千切りになっていて醤油しかつけてはいけないのに。キャベツの食べ方ひ
 とつとっても、この違いは何なんやろ? と思いまして。友だちの家では、魚でも
 豚でもなんでもフライにしてトンカツソースでベトベトにして食べている。お父さ
 んは肉体労働者で、帰ってくると腹巻から新聞とか競馬のメモとかいろんなもんが
 出てくるんですよ。で、テレビで阪神の試合をみてる。食卓のすぐ横にはパンツと
 か靴下とかが干してあってね。そんな中、みんなでフライを食う。うちではありえ
 ない食卓の光景でカルチャーショックでしたね、この家はワイルドやな〜って」


その違いが面白くて、他の家での食べ歩きが趣味になった。「カワムラさんちのケンちゃん」は近所で有名になった。「いつでも食べにきてええのよ〜」と声をかけられるままに遠慮せず毎晩誰かの家でご馳走になっていたが、やがて訪れると居留守を使う家も出てきて、泣きながら大人たちに抱えられて自宅に連れ戻されたこともあった。

料理からその家の文化が見える。その違いが面白い。だから、インドカレーひとつとっても、「こうでなきゃいけない」なんてことはないのだ。最近、仲のいいインド人にインド料理を教えているという。

 「これ入れたら旨くなるよって、カレーリーフをあげたら、『ありがと〜』って喜
 んでブチブチちぎって鍋に入れてるんですけど、使い方まちがっているんですよ。
 でもそれでいいんです、家庭料理は。料理でもてなそうとする気持ちが一番大事で、
 それを美味しくいただく気持ちが大事。そこには理屈じゃなく、フィジカリティが
 99%あるわけです」


カワムラさんの熱意と感性が凝縮された『Spice Journal』。年間購読者には、カレーキットも付いてくるので、ご興味ある人は是非手にとってみてほしい。


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『Spice Journal』04号発売中! 詳しくは下記URLへ
http://www.osaka-spice.net/

posted by 若手 at 15:19 | Comment(0) | TrackBack(0) | ゴメス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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